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新規ホウ素薬剤に関する論文が掲載されました

岡山大学中性子医療研究センター(NTRC)の道上宏之准教授らの研究グループは、近畿大学、京都大学との共同研究で、がん治療法のBNCT(ホウ素中性子捕捉療法)に利用可能な世界初のホウ素薬剤の開発に成功し、2020年11月11日に国際科学誌「Journal of Controlled Release」にResearch Article として掲載されました(2020年12月17日記者発表)。 https://doi.org/10.1016/j.jconrel.2020.11.001

 

BNCTの成否を分けるのは、ホウ素薬剤をいかにして効率的に、確実にがん細胞へ取り込ませるかという点です。NTRCでは、ペプチドにより構成されるナノ粒子とホウ素薬剤(BSH)を混合するだけで容易に作成可能なホウ素薬剤を開発しました。この薬剤は、ホウ素薬剤(BSH)単体では難しかった、がん組織への高い集積性と、がん細胞内部までの高い浸透性を有しており、従来と比較して数十倍高い濃度のホウ素が細胞内に取り込まれているのを確認しています。また、今回利用したペプチドナノ粒子は、ライフサイエンス分野で実用化開発を行っている、株式会社スリー・ディー・マトリックスより無償提供を受けており、これは「革新的BNCT用ホウ素薬剤OKD-001の研究開発」に関する岡山大学と同社との共同研究契約締結(2018年11月2日記者発表)に基づく研究成果に関連するものです。

 

なお、藤村助教(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科、中性子医療研究センター兼任)らは、多数のアルギニンからなるペプチド、例えば11R(L-アルギニンが11個結合したペプチド)とBSHを結合させたペプチド誘導体(BSH-11R)が、

細胞表面タンパク質CD44を高く発現しているがん細胞に選択的に取り込まれることに加え、BSH製剤が細胞内で滞留する際に必要となる、タンパク質合成に関わる複数の因子を世界で初めて発見しました。藤村助教らによれば、これらのデータを解析することで、より効果的なBNCTのために最適なホウ素製剤を選択することが可能になり得るとのことです。これらのデータは、Cells. 9(10):2149(2020)に報告されています。

 

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